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「ライさん!どうしたんですか」
顔をあげると、ライさんの青い顔が目に入った。
「構うな、キュロス」
あれは……熱中症かも……夏場の室外での部活の時に、僕もなったことがあった。
「ちょっマックスも!!大丈夫か!?」
ひんやりしてるところでも、水分を摂ってなければなるんだ!!!
「あッ水筒……」
いつも持ってる水筒がいつの間にか無い!!!ガーン、あれ気に入ってたのに……
「ライさん!しっかりしてください!!」
「サブローさん!水分ありますか!?食べれたらおにぎりとかも……」
「あっこらポメ吉はおにぎりはダメだよ〜ほーらこっちに来い。お水だよ〜」
リイヤ君は流石、わんこに慣れてる。
非常袋のポリ袋にお水を張って、ぺしゃぺしゃと水を舐めるポメ吉は落ちついた様子だけど……
ライさんの傍らの毛布は動かなかったし、ライさんの瞳は光を失いかけていた。
「冷やさなきゃ」
「宗一郎君、ライさんだけでも先に……」
「三島、俺ァまだ大丈夫だ。雨沢……データ収拾を優先させろ……」
「終わりました。アサガオの蔓の反応、ゼロです。10秒後、全員離脱。明るくなります。——10、」
「みんな、トレーニングルームに戻る」
「——9」
「明るくなる、目を瞑ってほしい」
「ポメ吉、こっちだよ」
「——7」
「やっと終わりか……」
ジュン君の言葉につられて安堵する。
「——5」
「姉」
「大丈夫」
「——3、……2、……1」
——僕とマックス君の長くて短い旅が、終わった。




