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「よし、何も起こらないようだ」
ひんやりとした神殿は、古代のアニメに出てくるギリシャの神殿のように、地殻に開いた空洞に崇高に組まれていた。
サブローさんの合図で、ゆっくりと足を踏み入れる。
久しぶりに着たHyLAのジャケットと、出せるようになった蒼い水素針が、勇気を生み出していく。
全神経で警戒しながら、ひんやりとした神殿を進んでいく。
宗ちゃんと繋がってる探索ドローンが道を照らしてくれてるから安心するけど、絶対に、仲間が笑顔でいられる結果にしたい。
……マックス君はともかくとして、蔓の先に蕾があれば、可能な限り速やかに光に還すほうがいい。
開花予測は概ね当たってるけど、IOP消失以降、開花はしてないから、予想が合っていたのかどうか、データは無いと聞いた。
そのために、スタッフの人たちを増やしているとも。
今ここで、切迫しているのは焦るけど、他の場所では、他の人たちが同じように頑張ってたりする。
「ポメたろう、可愛いね、リイヤ君」
「重いよ……リード……いや、命綱か。引っ張るから歩かせらんねぇし。モフモフでもねぇし」
「帰ったらお風呂に入れなきゃだね」
「できるかな……まぁ、重いけどあったけーわ」
僕も楓を抱っこしたくなった。




