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「慣れると楽しいでしょ!ジュン君」
フィギュアスケートの要領で、体の重心を片足ずつ交互に乗せると、爽快な風が勢いよく後ろに流れていく。
姉が選んだ横穴の一つに飛び込み、ひんやりとした冷たい空気が本物の氷の世界のようだった。
「話し……かけるな……!!!スケートなんてやったことあるか!!!」
そうはいっても、ジュン君が今も階段登りを続けていることを知ってる。
初めはよろついていたけど、どんどんスピードが上がっていた。
「これぇ!めっちゃ体幹重要な!でもスッゲー楽しー!!!」
壁面も利用して、リイヤ君は水を得た魚みたいに洞穴を進んでいた。
「はっ……ライさんすいません……」
「楽しむなという規定は別に無ぇ。だが気は抜くなキュロス、星ヶ咲家の長男」
「うっす」
「ハイ!」
家族の中で、僕は長男でもあるということを思い出す。
みんな、それぞれの役割があって、時には守ってもらうこともある。……だけど、対等でありたい。枷があっても、持てる力の全てを発揮したい。両手に力を込める。
……姉は結構身軽に、サブローさんと先導してくれている。楽しんではいないようだけど。
「宗ちゃん、あの蔦ってアサガオみたいな植物の蔦なの?」
支給された予備の通信機がHyLAとちゃんと繋がってる。
「そうだ、だが開花はまだ先だ」
「でも今日、散らしたほうがいいんだよね」
「……出来るかもしれないな」
「まぁ、無理はしないようにするよ」
とにかくやってみるけどね!!!




