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「なん……だろうこれは——……」
吸い込まれた路の先に、薄暗い海底湖があった。
……薄暗い、とは言っても、HyLAのライトアップドローンが追従してきていたので、湖の全景が、目視できるくらいにうすぼんやり映し出されてはいた。
「こんな空洞……地図にはないわね」
「小松さん……もしかしてわくわくしてませんか?」
「……言われたらしちゃうじゃない、ミカちゃん」
「ま、大丈夫ですよ。イヤリングにおかしな反応も無いし」
海底に開いた巨大な大洞穴の中のサファイアブルーの美しい地底湖。
「三陸を思い出すなぁ……」
通信機からリイヤ君の声が聴こえた。
「姉、あそこ……」
地底湖の壁に、いくつかの横穴が開いていた。
「そうだね。可能性があるとすれば、あそこカモ」
「みんな、探索は中止だ」
「なんでですか」
姉はレイダーじゃなくて、自分の手元に水素針を出現させていた。
「実華!降りるの!?」
「生存維持膜があるから死なないし……たぶんいる、あそこに」
姉の目測は、このところ外れたことが無かった。
「シュウジはここで……えっとジュンと待ってて」
「ほっしーさん?つまり俺も一緒に来いと?」
「だって……アタシかジュンじゃないとシュウジと一緒に戻れないし……」
「いや、行くけどさ……」




