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「僕と来てよ、シュウジ」
——枷は、きっとHyLAが外してくれるだろう。
「いかないよ」
「どうして?僕が嫌い?」
思いがけない質問に、言葉が詰まる。
「シュウジ!!!」
「姉!!!」
ハイドロレイダーが砂煙を上げて走ってくる。
ライトを浴びるマックス君に向き直ると、笑顔が消えていた。
「もう、逃げられないと思うよ」
「意地悪を言うんだな。……僕は消されると思う?」
「誰に?」
マックス君の中で、誰がそんなことをするという幻想があるんだろう……
そう出来るなら、誰も傷ついたりしないのに。
宙を跳ぶ円盤から、グングニルスタッズが降って来て、マックス君と僕の間を隔てた。
子どもでも知ってる。鋲と鋲の間には見えない電撃が張り巡らされていて、越えようとすると身体が麻痺する。
「マックス君、馬鹿なこと聞くよ、仲良く出来ないのかな、僕たち」
そう出来るなら、マックス君はこんなことしていないのかもしれない。
「仲がいいと思っているのは、こっちだけ?シュウジ」
「思ってたよ」
そうなれたらと。始めは——……
波風を、張り巡らされた仕掛けが蒸発させて、マックス君の姿が蜃気楼みたいに歪んだ。
「……待ってよ!!」
マックス君の身体の上を、電撃が弾ける。
「なんで……なんで倒れないの!?」
——AIdだから。
「シュウジ!!!乗って!!」
引っ張られた腕が、真夏みたいに熱くて……——哀しかった。




