63/747

61

「ヤマタノオロチ、巨大馬《うま》、大猿、青い鳥、巨大猪《イノシシ》……」

　土曜日の午後、アタシはサブローを小さな倉庫に呼び出していた。

　白い小さな、倉庫。

　密談をするためだけにあるような倉庫《ばしょ》に思うけど、いろんな最新のシステムがある、母がいつも、HyLa(ハイラ)の事務で使ってる部屋だ。搭乗者も会議利用の権限が許されている。

　アタシは手をかざして、モニターを展開した。

　サブローに、イスとテーブルを出してやる。

「座ってください」

　サブローは静かにイスに座った。

　アタシも静かに座った。

「鼠《ねずみ》、牛、虎、兎《うさぎ》、ドラゴン？、羊、犬……」

「……そうだね」

　サブローはため息をついた。

「他はギリ大丈夫かもですが、兎《うさぎ》と犬はシュウジには無理です。絶対に」

「おそらく、……そうだね。シュウジ君の場合」

「ふ、ふざけてます！これって人為的な悪戯《いたずら》ですか？十二支なんて……ふざけてるっていうか……」

「いや、人為的である可能性は低いと見てる。けど、どうやらディストレスは日本を狙っていると思っている。可能性の段階だけどね」

「狙いは大世界の人工島(アイランドオブピース)と世界の滅亡じゃないんですか？」

「そう思われていたが、それは間違いだったんだ。いや、言葉が足りないと言うべきか……」

　サブローはモバイルホログラムを立ち上げた。日本地図が映る。

　黒いモヤモヤと白いモヤモヤが日本を包んでいて、栃木、静岡、熊本、北海道に黒いモヤが集まっていた。

　その黒いモヤの流れは、東京湾の中心部から噴き出しているように見える。

「これって……！」