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誕生日会、やるに決まってるでしょー☆☆☆と言うだけ言って、幸子は1組の授業に戻ってしまった。
なんかいろいろ頑張ったお礼(?)に、エリカさんとマーガレットさんの計らいで、 Eighthの倉庫でアタシの誕生日会をやってくれるらしい……
「私も行っていいのかな……」
ぽそ、っとリディアが呟く。
「い、いいに決まってるじゃん!!っていうか、リディアにも空けておいてねって幸子言ってたし!って、えっなんかアタシ、祝いを催促してるみたい!?」
しどろもどろになってあたふたしてると、リディアはくすくすと微笑んだ。
「大丈夫、プレゼントはもうあるんだ。いつ渡そうかなって思ってたの」
「えっ、(照)」
「わかった、私も参加するね」
「あ、ありがとう」
リディアは嬉しそうに、残りのパフェを食べて、ふぅ〜とほうじ茶を飲み干した。
「じゃあ私も授業行くね」
「うん、またね、リディア」
「またね、ほっしーちゃん」
アタシは、冷たい石の椅子に寄りかかって、少し温くなったほうじ茶を飲んだ。
「日本茶って、少し温くなってもそれはそれでおいしい……」
誰に言うともなく、今の気持ちを呟く。
「……ん?」
ポケットのモバイルが震えた。
「なんだ、シュウジか」
——姉お疲れ〜、土曜のパーティー、部活でちょっと遅れるカモ。
「あいつ……アタシより先に知ってたのか……OK.無理せずに……と」
「……これでいいんでしょ」
姉は1ミリも疑う筈が無い。
いつものやりとり。
「宗にも送っておいてよ、シュウジ」
「宗ちゃんには直ぐにバレるよ、僕がどういう風に言ってもね」
エア・マグナム新幹線の車窓に、夕陽が差してくる。
やがて見えてくる、荒野に聳える陽を浴びる赤い巨峰。
「綺麗だね、シュウジ。君の守った富士の夕陽は……」
拘束具は、外れそうに無かった。
「僕は許さないよ」
この景色が、どんなに美しくても。
「まぁ、旅を楽しもう?……シュウジ」
マックス君の黒い瞳は、愉しげに赤い光を映していた。




