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「んー!ほろ苦☆☆☆」
思わず幸子みたいなテンションで、笑みが溢れてしまう。
笑み?うーん、そんなもんじゃナイ、きっとキラキラな何かがアタシから今、溢れている。
それっくらいに!
「おいしいねぇ、ほっしーちゃん!」
同じく、発光せんばかりにホンワリ微笑むリディアが、大満足げにパフェ用の綺麗な銀のスプーンをぱくっ、と口に咥えてキラキラしている。
「もー!こんなにおいしいんだったら、もっと早く食べれば良かったっ!!!」
ひんやりはちみつ、ほんのりバニラ。
とろり、甘苦いはちみつの風味が、ココロにゆっくり染みていくように、悲しかったことを癒していく。
悲しかったこと……?
アタシはリディアを見つめた。
ココロに染みるはちみつの優しい余韻と、目の前にいるリディアは、幸せそのもので、今この瞬間だけがアタシの日常なんだと錯覚してしまう。
「なんか、やろう、やろうって思ってても、うっかり機会逃しちゃったりするよね?」
「そうなんだよね……」
リディアの優しい声に、空調の効いた食堂で冷たいパフェとあったかいほうじ茶。
心が解けていって、いろいろなことが思い出されてくる。
「ほっしーちゃん、醤油味も食べなよ?」
差し出された、焦がし醤油の香りは香ばしくて、はちみつのレモンイエローと、醤油の優しいブラウンに心が丸くなっていく。
「ありがと、リディア。……!!おいしっ!!!」
これは何個も食べれちゃうやつだ。




