576.5 手記27
「失敗だったって言いたいんでしょう、俺に声をかけたこと」
三島三朗は、IOP政府の残党直下の特務機関の主要人物だ……
宇宙開発部総督、三島一、AId宇宙移植開発科学者、三島仁花の弟——。
父も三島三朗の存在を懸念しながら……見守っていたのかもしれない。
若いのか知らないけれど、白いサンカットパーカーと、ダメージジーンズ。常にラフな格好で、三島三朗は俺の家に現れた。
外さないサングラスの下に、父が懸念していた秘密を隠して。
「そうでもないよ。君の……好きな言い方で言うと、シンクロ率みたいに言うとモチベーションになるかな……コックピット内のバランスは寸分の狂いなく合致していたし、ワープアウトも問題なかった。うまくいってると思ったよ」
体を起こす気持ちになれない。
力が入らないんだ……
意識とは無関係に。
背中から三島三朗の気配がしたけれど、俺はただ壁を見つめていた。
「好きじゃないです」
かつて熱狂したことは、何もかも靄がかかったように、遠い記憶だ。
「そう?俺も好きだよ。古代のストーリーは、身に染みる。かっこいいだけじゃなくてね」
そうだった筈だ。俺も。
でも、そんな自分は、まるで別の存在のようだ。
俺はただ壁を見つめるだけだ。
◯◯◯
「また……観てるの……明日学校だよ!?」
「みっちゃん、男子には、夜を賭しても識らなければいけないことがあるんだよ」
「いやそれ録画でしょ??」
「姉、……男子には……」
「いやいや、しかも何周目???……ま、ちょっとカッコいいけどさ……」
「そうでしょう、みっちゃん!」
「姉も観るっ!?」
「いやアタシは寝ます。二回くらい観たし」
「姉も好きよのう」
「ハァ。ほどほどにしてちゃんと寝てよね。……おやすみ!」




