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「どう……違うんだろ……」
「え!?」
アタシは必死に、操縦管を動かしていた。動きが……鈍い……!!!
「ねえ姉、どう……違うの?」
小学校4年生の弟がそう呟いた。
放牧されたAIdの馬と、巨大な馬
大きさは違うけれど、見た目は一緒だった。
「消す……の?同じなのに」
「え!!?……!!!」
アタシのミス。それに気づいた。
これは、シュウジにはできない。
シュウジは優しい、心の芯が、どこまでも。
予期、できなかった。
人に飼われた馬がいるなんて……。
「アタシがやるから!」
でも、力が集まらない……
「アタシが……!」
「俺がやるよ、ほっしぃ!!」
手のひらにパァン!という衝撃を受けて、ハイドロレイダーは草原の隅に投げ飛ばされた!
「うわっ!」
「選手交代ってやつだ!……ぐっ!!!」
巨大馬の猛攻を受けて、ナノゲイルレイダーの装甲がボロボロになっていく!
ダメ!倒される……!
「シュウジ!やろうよ!!アタシたちも!!!」
じゃないと……じゃないと……!!!
……アタシはうまく言えなくて、繰り返しシュウジの名前を呼んだ。
「……わかるよ……シュウジ!」
コックピットの中に、玲鷗の声が響く。
「寝覚めがいいもんじゃないさ……けどな!!!」
あの巨大馬……速い!!
「今隣に居る家族より大事なモンてさ、あんのかよ!」
アタシは必死に操縦管を握った。
どうにもならなくて、涙が溢れて来る……
「何のために生きるのか……」
アタシたちが消しているもの……
「俺のため!仲間のため!!!」
それは…………
「俺の道には希望がある!シュウジ、ほっしぃ!仲間がいる!」
(玲鷗君……)
「立ち上がれ!甦りやがれ!!!」
でも!
「ディストレス!!!!」
「ナノゲイル!!!!!!」
「バーキング……」
逃げたくない!!!
「ドロップ!!!!!!!!!!!」
「「アロー!!!!!!!!!!!!」」
草原に、緑の風が舞い降りた。
晴れた日の風は迷子のような巨大馬を誘った。
そして薄明光線が降り注ぐ……




