572
「対象の姿は最近良く出現している大亀です」
通信機から、サブローの声が響いた。
「……オーケイ」
アタシは体を起こして、操縦管を握った。
ミシェルさんと……——エイミーさんの顔が過ぎる。
——あの日、ふたりと話は、した。
……アタシに何が出来たのか、わからないけれど。
「亀が出たってことは、そのうち鶴でもでるのか?大佐」
「そうだ!十二支だけじゃないんじゃん……って今気づいた……」
いつの間にかシュウジも、ジュンもしっかりと身体を起こしていた。
「出るだろうね。IOP初代大統領は信仰心が篤かったからね……。日本古来の信仰に所縁のある存在の姿を借りて、ディストレスは今後も現れると予想しているよ」
迫る課題にいっぱいになって、本筋が薄らいでしまう。
搭乗者には、学ぶべきことが……識ることが沢山あるのに……——。
「まぁ対象の組成が大幅に変わるわけじゃないからね。日々のトレーニングで対応していけるはずだ。みんなリラックスして欲しい」
サブローはそう言うけれども……。
「実華、表情がカタいよ」
シュウジがこちらを見て来る。
アタシはすぅっ……と息を吸い込んで、ふぅぅーと大きく吐いた。
「まぁ、やることは同じってわけか……」
「そうそ」
水平線の向こうが、不自然に歪んだ




