表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
孤高のヴァイオレット……——人類のアーティチョーク
600/750

566

「やめてもいいのよ」


 ふいに、マーガレットさんが言った。


 アタシは振り返って、マーガレットさんを見上げる。


 窓がきしんで、隙間風がスコーンの香りを立ち昇らせる。少し冷めてしまったかもしれない……でも、ここのスコーンは冷めてからもみっしりぎゅっとしていて、美味しいのだ。


 歴史を帯びた古い木の壁の色が、気持ちを落ち着かせてくる。


「いえっ、やってみます」


 アタシはスコーンが入ったバスケットをぎゅ、っと握った。


「何ができるか……まったくわかりませんけど」


 正直な気持ちだった。


 中2のアタシが、高校2年生の二人に何ができるのかわからなかった。


 ……嫌われてしまうかもしれないと思った。


 帰ってほしいような態度を取られるかもしれないとも思った。


それでも、エリカさんやマーガレットさんが大切に思う仲間が、理由もなくあんなことをするとは思えなかった。


「いいのよ、それで」


 マーガレットさんは、深い、スミレ色のドアの前で足を止めた。


「二人には、エリカから話してあるわ。……今日、貴女あなたが来ること。メディカルチェックで異常はなかった。……けれど、なにかあったら呼んで頂戴ちょうだい


 マーガレットさんはアタシの左耳にシルバーチェーンのイヤーカフを付けた。


「先端のパールがボタンになってるの。押すと、エリカと私に直接(つな)がるわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ