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青空の中みたいな、どこまでも空色の空間の中で、アタシは玲鷗とシュウジを立たせたままなことにはっと気がついた。
トレーニングルームにも iconが完備されている。
アタシは椅子よ出ろとイメージした。
学校の椅子みたいなパイプ椅子風椅子が三脚現れる。
「椅子、出したから」
「お、サンキューほっしぃ」
しまった、玲鷗にはちょっと、ちっちゃかったかも……ま、まぁいいか!
アタシはごほん!と咳払いした。
「えっと、それじゃあ、その施設かアルバイト先が大世界の人工島にあったりとか?」
「んにゃ、ないよ。岡山だ」
「晴れの国だね!」
「そう!シュウジ、良く知ってるじゃん!」
へぇ、そうなんだ。良く知ってるじゃんシュウジ。
確かに、蒼空の太陽のような男。
話せば話すほど、玲鷗には影みたいなモノを感じなくなる。
清々しさすら感じていた。
「実華、実は僕、玲鷗君のこと知ってたんだ。カッコいいよね!」
あー……そういえばシュウジ、学校の友だちとプロレスの動画にハマってるって言ってた時があったっけ。
「わかった。じゃあアタシの質問は以上。シュウジもいい?……では明日8時、エリア阿蘇、烏帽子岳の麓の草原にてホーリーカンパニュラの撃破」
げ!なんか今のアタシ、サブローっぽい。
「ガンバロー!」
「おう!」
金髪と白い歯が眩しい。
玲鷗なら明日もきっと大丈夫な気がした。
そう、玲鷗ならきっと。
快晴のエリア阿蘇。烏帽子岳の麓には、美しい大草原が広がっている。
若草色の草原に、巨大なツリガネソウの紫が映え、草原に放牧された馬が逃げるように散り散りに走り、黄緑のナノゲイルレイダーとグリーンのハイドロレイダーが巨大な馬の……突進を受けていた!!!
「ちょっ!シュウジ!どうしたの!?」
急な違和感——。
アタシは斜め前のコックピットカプセルに呼びかけた。
「ほっしぃ!どうした!?」
ナノゲイルレイダーがハイドロレイダーを受け止めなかったら、シュウジとアタシは巨大馬の下敷きになっていた。
「シュウジ!シュウジ!!!」
シュウジが微動だにしない。
アタシの……アタシだけの力じゃハイドロレイダーを動かせないのに……!!
操縦管を握って懸命に巨大な馬を押し返すけど、アタシだけの力じゃびくともしない!
遠巻きに、何頭もの小さな馬たちが、不安げにこちらを見つめていた。




