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リディア・ノーマン——……
たいして彼女を知っているわけじゃなかった。
透き通るような白い肌に薔薇色の頬。
いくつもの光を反射する、銀色のサラサラの髪。
光の妖精のような姿は、いつも魔法のような光を放ち、誰をも惹きつけている。
言葉少なな私と、見た目以外、何が違うのか分からなかった。
そこに居るだけで、人を惹きつける光。
……わたし、あの子少し苦手。
そう言ってきたエミリーと、秘密めいた絆が生まれた。
……良くないことだと思っていた。
けれど、不思議とエミリーと寄り添うことで、自分の中の欠けていた何が、補填されるような気がした。
リバティドルフィンの攻撃を受ける時、当然だという気持ちと、空虚な虚しさがあって、気づけば私はEighthのトレーニングルームの保護カプセルの中に入れられていた。
太陽みたいな培養液が傷を治していくのが分かったけれど、心は埋まらなかった。
隣のカプセルで、エミリーが虚空を見つめている。
「エミ……リ……」
返事は無かった。
どちらがきっかけなのかは分からなかった。
けれど……
私たちは……いや、私はホヌのコックピットで、欲望の刹那に飲み込まれていた。
私たちは……私は、彼女を知らないのに……
「ミシェル……」
カプセルの向こうで、エリカさんが私を呼んだ。




