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「リディアッ!!!」
本部の医務室は、小学校の保健室みたいに、簡素でシンプルな小さな部屋だった。
小さなパイプベッドに、リディアの穏やかな寝息が響いている……——。
「……——ッ!!」
アタシは安堵の声を飲み込んだ。
「……大丈夫よ」
小松さんは、ホログラムカルテに何かを書き込んでから、丸椅子をクルリと回転させて、笑顔を見せた。
「少ししたら、リディアさんには休憩棟に移ってもらうわ。あそこのほうが広いし、ゆったり休めると思うし。リディアさんのご家族が迎えに来るまでスタッフがつくから、ミカちゃんも休んでいて大丈夫よ」
「でも……」
「一緒に眠っていてもいいのよ」
「いいえ、ミーティングに出ます」
「無理はしないでね」
「……すみません」
「待って、ミカちゃん」
保健室の引き戸に手をかけたアタシを小松さんが呼び止める。
「ブレイズも奪われて、ホヌも壊れちゃって……折角作ったのになぁ」
小松さんは、ぐっと伸びをして、大きなため息を吐いた。
「愚痴……ですか?」
大人は子どもに、愚痴なんて言わないんだと思っていた。
グルグルと丸椅子を回転させる様子が少女のようで、不謹慎にも安心してしまう。けれど……
「守れなくて、ごめんなさい。……新しい機体」
「こっちもゴメン!……次の手、考えなきゃね!!」
「……ハイ!」
気持ちの整理がつかなくても、待ってくれる事態ばかりじゃないのだ。




