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「な……なんでこうなった……」
常夏のハワイの海……の筈が、寒々しい水流に体が萎縮してしまう。
フィンヨンの真っ白な美しい機体が、巨大な亀たちに取り囲まれていた。
宗ちゃんとアタシの乗ったリバティドルフィンは、亀たちが巻き起こす水流に近づけないでいた。
シュウジとジュンのいないドルフィンは、宗ちゃんの好きな緋色に燃えていたけれど、その熱はブルーハワイの水流に弾かれてしまう。
「ミシェルさん!エミリーさん!!やめて!!」
叫んでも、懇願しても、返事は無かった。
——新しいSLT(水中チーム)入りの機体の試運転の筈だった。
HyLA本部の総力を結した透明なハワイアンブルーの新しいレイダー。
幸運の象徴。
海に同化する優しい顔つきの青い海亀、通称ホヌは、演習の最中、突如そのエネルギーをフィンヨンに向けた。
そしてどこから集まったのか、本物の悪意の群れが、リバティを弾き、リディアを取り囲んでいる……——。
「……——応答が無い……」
「でも、ホヌを攻撃するわけにはいかないよね……」
マックスのことが思い出される。
まだ解決していないことなんて、いくつもある。
それでも必死に進んでいるのに、どうしてこんなことが起こるんだろう……。
「リディア、ホヌの周りの何体かを消滅させる。その隙に水流を抜けられそうかやってみてほしい」
「わかった。雨沢君、もし出来なかったら……」
珍しく、リディアが弱気だった。
「機体を棄てる。迷わず離脱ボタンでトレーニングルームに戻ってほしい。みっちゃん、僕らも失敗したらこの海域を離脱する」
「わ、わかった」
アタシは操縦管に力を込めた。
「「薄明の光が奔流となる!」
「俺の」
「私の」
「「「力で流れを変えて」」」
リバティから、緋い光が迸る!!
「「突き進め!!」」
——!?
「「ディストレス!!!」」
ホヌから、青い光が放たれる
「リバティ ストーム!!!!!!」
「ほっしーちゃん!!!……ダメッ!!!」
「みっちゃん!!中止だ!!!」
「…………えっ…………?」
緋と、青の水流がぶつかって弾ける——
それは、激しく、幻想的で、……あの日の……夢みたいで……————




