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「ホント、アタシも知らなかったわ。アタシにハピたん似のハトコが居るなんて」
久しぶりのショーコの紅茶は美味しかった。
……幸子のクッキーも美味しかった。アタシのフィナンシェも無事に紅茶にマリアージュしてた。
でも!
「だって私、友だちいないんだもん!オフの日に私、ひとりって、寂しいじゃん……」
幸子は三叉路で立ち止まって、目を伏せた。
普通の少女に擬態しきれてない、幸子の黒曜石みたいに綺麗な瞳が夕陽の中で輝いて、青いスカートが揺れている。
確かに、幸子の境遇を思うと、友だちを作ってるヒマなんてなかったのかもしれないけど……。
「中学、行かないの?」
「私、大検取ってる」
「うそっ」
「これでも、医者の娘だしぃー☆」
「……ごめん」
そうだ、大世界の人工島で幸子の両親は医者をしていたと聞いた。
つまり、幸子の両親は、もう……。
「あ、あのさ。幸子っていつもなんかこう、キラキラしてるけど、いい意味でね!?レイダーチームにはキラキラしなくなったっていうか、幸子のままっていうか……その……」
レイダーチームは、素のままの幸子の仲間ってことでいいんじゃないかって思ったけど、なんか、上手く言えなくて、アタシも下のお母さんのことを思い出したりして、切ない気持ちになった。
「ミカ!当ったり前でしょ?世の中にはね、ファンになってくれる人と絶対にならない人。二種類いるの。ならない人にサービスしても無駄だもん☆た・し・か・に!シュウジ君はカワイイししっかりしてるけど、二種類のどっちなのか見極めて冷静に対応しなきゃ、アイドルなんてやれないんだよん☆」
「いや、そういうことじゃなくて、つまり……」
「変なミカ!☆」
ふわ、とミルクティーの匂いがして、ふわふわのマシュマロが頬に触れた。




