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「また買うの?」
4月最後の週末、アタシたちはドライブに来ていた。
母とシュウジとアタシと楓——。
母はお給料でHyLAのSUVを買ったみたいだ。
駐車場横の売店には、前に来た時と同じにお蕎麦やうどん、お饅頭なんかが売っていて、シュウジは前の時と同じように、発光する薄皮の美味しいお饅頭を買っていた。中はほんのり甘いこし餡で、心に染み入るみたいにおいしいお饅頭だ。
「買うよ。美味しかったでしょ?」
弟は前に、母とアタシに二個ずつ、くれた。
記憶に残っているのは、あの日の風景が綺麗だったからか、家族と過ごす時間の優しさからか、理由はわからない。
アタシは、あの日の餡の味を、今も覚えていた。
「今度はアタシが買おっか」
「え、いいよ。他のやつも買いたいし」
「凄い食べるじゃん」
「育ちざかりですから」
そうは言っても、小学5年生の弟の身長は、153センチのアタシの目線よりやや低いくらいだった。
でも、日に日に手足は逞しくなっている気はする。
「新味、出たらしいよ」
「アンタの好きな苺味じゃん」
弟は結局、こし餡の16個入りを一つと、苺餡の6個入りをひと箱ずつ買った。
「餡子っておいしいよね」
そう言いながら、弟は饅頭が入ったエコバックを嬉しそうに揺らした。




