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「ねぇサブロー。桜ってやっぱり綺麗だよね」
お花見の喧騒は、そろそろ鎮まる頃かもしれないし、まだ続くのかもしれない。
暖かな、夜桜を映す光は、泡沫の幻みたいな景色かもしれない。
それでも同じ季節、変わらずにどこかに在る景色は、変わらずに美しいのだ。
「ミカ君がそう思ってくれているなら嬉しいよ」
「なんか急に上司みたい」
「ご、ご免……そんなつもりはないよ。俺は指揮系統の発信をやっているけれども、俺よりもミカ君のほうが優れていることもたくさんある。対等さ。仲間である限りね」
「……ありがと」
そんなことある筈無い。
アタシは子どもで、なにもかもが足りていないし、サブローをリーダーとして頼っている。
だけど、こんなに美しく咲いた桜を見ていると、そう在りたいし、みんなと仲間でいたいと思う気持ちが生まれてくる。
「サブローがいなかったら、みんなここに居ないと思うよ」
伝えられる時間は、無限に用意されていない。
「ありがとう、ミカ君」
サブローがいて、サブローを支えた人たちがいて、アタシたちがいて……
創ってきた景色は、一人によるものじゃない。
それでも明日がどうなるか分からないことを、サブローもアタシも……みんな、どこかで知っているのだ。




