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ピンク色のビー玉ソーダが、オレンジの光の下できらきらと揺らめく。
しゅわしゅわの気泡が、少し熱を持った喉を通り過ぎていく。
今、この桜の花が舞い散る景色をぜんぶ覚えておきたい。
それくらいに暖かで、どこか幻みたいな風景だった。
「ねぇサブロー、このビー玉ソーダ、ピンク色、なんか多くない?」
氷が張ったタルの中に、キラキラのガラス瓶が沢山入っている。緑、黄色、水色、そしてたくさんのピンク。
この桜の夕べに合わせた趣向なのだろうか。
「お花見だから?」
アタシは気になって訊いてみた。
シュウジたち、男子は思い思いの屋台ではしゃいでいる。
幸子とリディアとロボ菜ちゃんとレイさんは、レジャーシートの上で桜に魅入っていた。
アタシはソーダをもう一本飲もうと思って、ちょっと抜けてきた。
四月——。
心が急いて、喉が渇いていた。
どんどん何かしたくて、おいしいものも沢山食べたい。
アタシは二本目のピンク色の瓶を手に取った。氷水が手首を伝う。
「そうだね、それもあるよ」
春なのにアロハシャツを着たサブローは、下もハーフパンツで寒そうだった。
けど、アッシュグレーのビー玉ソーダが、なぜか暖かそうに光を映して揺れる。
「桜色が怖い——……そういう人も、居たんだけどね」




