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いまだかつて、こんなにスムーズにいろんな事が上手くいったことってあっただろうか……いや、無い。
嘘、たぶん在ったと思う。
アタシたちは、いやアタシだけかもしれないけれど、上手くいったことは何故だか直ぐに忘れてしまって、上手くいかなかったことばかり、もやもやと考えてしまう。
少しずつ仲間が増えてきて、いつの間にかまた、小学校生活を過ごせるようになった時、Hylabに入れることが決まった時、……——初めて、ホーリーチェリーを撃破出来た時……。
うまくいきっこ無いと、今思えば、半ば自棄になっていた時も在ったけど……。
全部が上手くいかなかったわけじゃない。
この、ブルーグレーの海みたいに、少し怖くて、美しい景色が、思い返せばいくつも在ったんだ。
HyLA港発のファーストミッションをリバティドルフィン、コランダム改は無事に終えて帰路に着いた。
みんなでシュウジの作り置き、ほうれん草シチューを食べたりなんかして、玄関先まで見送る。
春を告げる風が急に止んで、心が穏やかになる。
「じゃあ、また明日ね!ミカ!」
「うん、おやすみ幸子」
真っ白な一等星が、灰色の空に輝いている。
「おやすみ〜」
自分はもっと、何かできるかもしれない。
そう思える夜だった。




