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親潮と黒潮の潮目も無事に通り過ぎ、少し灰色の海の中を泳ぐ。
それでも大きくて美しい海は、アタシの心を穏やかにさせる。
「ねージュン君、音楽なんかかけよ」
「あっじゃあ、星の歌でもいい?」
アタシは曲が決まる前にリクエストをした。
「Lonely, Sand glassのカップリングの」
ハピたんがバレンタインライブで歌ってた曲のカップリング曲。
いつも、ジュンとシュウジは古代のヒーロアニメやスポーツアニメのオープニング曲なんかをかけたりしがちだ。
……なんか、この穏やかな気持ちの今、聴きたい気分だったからカットインしてしまった。
「いいね!」
「いいな」
意外にも、シュウジもジュンも賛成してくれた。
「えー☆じゃあ歌っちゃおうかなぁ~☆☆☆」
幸子は思いのほか出し惜しみをしないというか、歌うことが本当に好きなのか、気づいたら歌を歌っていたり、聴かせてくれたりもする。
「え、えっとね。イントロと間奏が聴きたくて……」
ハピたんがライブで歌ったLonely, Sand glassもいいのですが、星の歌のキラキラのウィンドチャイムの音色にアタシは何度も癒されて、眠れぬ夜、今みたいな穏やかな気持ちになれたのです……。って、インドア派特有の語りをそのまま伝えたら幸子は引いてしまうだろうか……




