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ほとんど音もなく、アタシたちは飛び、流氷の上に降り立った。
シュウジ、ジュンと乗る時の機体の色は白——。
メカニックの人たちに丁寧に手入れされた純白の機体は、空中で廻旋し、しっかりとサブローが指定したキラキラ光る流氷の上に着地した。
白いスイトピーの蕾……
肉眼では、目視出来ない距離だけれど、その先にそれが存在することを、確かに感じていた。
なぜかそれは、いつものように禍々しい雰囲気ではなくて、とても神聖な心持ちがした。
いや、思えばいつもそうだったのかもしれない。自分に関係のない場面であればきっと、ただ美しい、どこか外国の景色のように、そう思ったりすらしたかもしれない。
きっとそれは恐れであったり、未来が潰えてしまう悲しみだったり、そういう思いが、もやもやとした禍々しさを創り出していたのかもしれないとも思う。
それくらいに、この冷たい碧い海と、白い流氷は、なぜだかアタシに穏やかな気持ちをもたらしていた。
——……ザプン……と水飛沫が跳ねて、コランダム改が少し離れた流氷に降り立った。空中で仕舞われたフィンは、赤い花火みたいな残像を残して、キラキラと輝いている。
不安定な足場は、アタシの心のようだった。
覚束なくて、ゆらゆらと揺れる流氷のような頼りない気持ち——。
流氷の上で、むしろ、アタシの心は凪いでいた。




