504.5 手記21
——どうしようもない失敗をしても、夜明けはやって来る。……やってきてしまう。
俺は久しぶりにヨガマットなんてひっぱり出してきて、ヤシの木のポーズなんてやってみる。
……筋力がだいぶ落ちている。三人でアパートで暮らしたあの頃、仁花がヨガにはまり出して、ハジメ兄はやらなかった。
筋力の問題では無かった。適正がない……それが解だと思う。
屍のポーズ……。
腹の底から息をしていると、ふと新しい考えが浮かんでくることがある。
——覆らない解を、いつまでもぐるぐる考えてたって仕方がない。
俺は自分をソルジャーだと思っていた。俺は……科学者ではない。
それでも、エリアBの仲間や拓海と過ごすうちに、生み出すこと、考えること、探求することがどれだけ沢山のことに道を作るか——……それは戦うことと同じくらいに尊いということに気づいていた。
物理的な力を持たない存在が弱者なのか……それは全く違う。
レイダーを駆れない俺は……俺がやるべきことは——。
「考えろ、三島」
休憩室のにじり口の扉が開いて、拓海が狭そうに入って来る。
「ちょっ今ヨガしてるんだけど」
「知るか」
拓海は丁寧に蓮華座を組んだ。綺麗な姿勢の胡坐だ。
「狭いって」
俺も同じように、姿勢を正して合掌する。
丁寧に息を吸って、細く長く、丁寧に息を吐く。
外の波の音が聴こえてくる気がする。
「探そう、拓海。新しい搭乗者を」
「……お前のミスのデータは取ってある。何が足りなかったかの検証も」
「ミスって言うな、笑」
「……俺のミスだ。お前のイオンバランスに合わせられなかった」
「難しかったよね……」
冷たい波の音だけが聴こえる気がする——。
だけど、それはキンと冷えて心地が良くて、穏やかだった。
「見つかるかな、すぐに」
「見つかるまでやる。……それだけだ」
——終わらない試験……それはワルツみたいだ。
「……そうだね」
うまくいったら嬉しい。うまくいかなかったら繰り返し……それだけだ。
「痛てて……なんか足痺れてきた」
「修練が足りんな」
「……繰り返すよ。……ありがとう」
拓海は返事をせず、深い呼吸の音だけが波の音に重なっていた——……




