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高い天井から、ホバー・コア・ポートに乗った小松さんが降りてくる。
ライティングデスクの周りで幸子とアタシは顔を見合わせて、デスクに差し出された絵本を見つめた。
——人魚姫……。
アタシの憧れのプリンセスだった。
ん?いや違う。マーメイドスーツの製作と実践。及び海中遊泳の圧力別トライアル試験についての論文。と書いてある……。
「こ、小松さん……これは……?」
「こほん。……まぁこれは私の趣味の文献なんだけどね。開発研究所、エリアBの確認によるとね、幸子ちゃんは歩行型レイダーの適性が極めて高いの」
「……どういう意味ですか?」
「変形に拘る理由がナイってこと。楽しくって、得意なことをやればいいんじゃないかな」
悪戯っぽく微笑む小松さんは、急に少女のようで、きゅんとしてしまう。
「そ、それってどういうことですか……?」
「つまりね——」
——その時既に、コランダム改は出来ていた。
幸子のための深紅のコランダム改——。
羨ましくもあり、幸子が嬉しそうで嬉しい。
「ね、ミカ。私マーメイドより白雪姫が好きなんだ、実は」
帰り道、幸子が呟いた。
「なんか、ミカってちょっと白雪姫に似てる」
「えっ!?」
そう言った幸子の顔は、なぜか晴れ晴れとした笑顔に思えた。




