492.5 手記20
——なんにもする気がしない——。
灰色の通路の奥……小さなにじり口の奥にある二畳ほどの畳の上に、俺はずっと横たわっていた。
拓海が籠っていた、海の見える秘密基地。
古代の漫画本を無造作に積み上げて、俺は窓から見える雲を眺めていた。
時と共に形を変える雲……。
爽やかに青い空が憎かった。
搭乗試験は、失敗だった。
……成功とも言える。
ブレイズレイダーの稼働パーツは、どれも問題なく動くことが分かった。
——俺では駄目だというだけだ。
ごろん、と身体を横に向けて、壁にかかったからくり時計を眺める。拓海が備え付けた時計だ。
時が来ると、機械仕掛けの猫とウサギが出てきて、フルートとピッコロを奏でる仕組みだ。
「ファンシーだよね、拓海って結構……」
仁花が好きそ……。
靄がかかったような頭で、そんなことを考える。
——違和感があった。
アドレナリンが臨界点を超えたような爽快感と、急激な違和感。
——俺では、これ以上動かせない……。そう感じていた。
この研究は、俺ではない誰かでないと……結果が出せない。
その事実に打ちのめされてされていた。
——なんにもする気がしないよ……仁花。
姉の名前を繰り返してしまう。
いつも傍にある姉の声は、こんな時に限って何も聴こえない。
高くて青い空が……憎らしかった。




