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「いや……あれは盗まれたコランダムでしょ?」
「違うじゃん、目が違うじゃん」
コランダムの瞳は紫がかったピンク色。
でも彷徨うように辺りを見回す赤いレイダーは、その体も、瞳も、熱い血潮を思わせる鮮やかな赤だった。
「マ、マックス……ウサギのマックスは黒い毛並みにエメラルドグリーンの瞳、アタシたちのマックスと同じ色だって言ってたじゃん……」
アタシは動揺して、よくわからないことを言ってしまう。そんなこと今関係あるのだろうか……。
「うさぎの目は赤目って決まってるじゃん。……違うこもいるけど」
「いやいやいやいや…………」
どう考えても、あれはレイダーだ。色は見慣れない赤だけど……。
けど不思議と、シュウジが言うのならそうなのかもしれない。
「楓と同じってこと?」
「そう」
凶暴な消し炭の塊だった猫。
それを家族に迎えたのはシュウジだ。
「……どうしてそう思ったの?」
楓のことも。あのレイダーのことも。
なぜそんなシュウジは風に思えるのか……。でも訊きながら、もうアタシは納得してしまっていた。
「わかんないよ。盗まれたっていうのは本当だと思うし。コランダムに関してはね」
あれは幸子のマックスなのだ。
……泣いて……る——?
イヤリングが震えた。




