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由子さんから、うさぎのマックスの話を訊いた。
アタシは楓のことが心配になったけど、幸子の傍を離れられずにいて、月基地のハンモックの毛布に二人で包まっていた。猫になったみたいに。
幸子はなんにも言わなかった。
時々、お茶を飲む。
アタシは食堂できちんとごはんを食べたけど、幸子は一緒にいかなかった。
時々、エネルギーゼリーは飲んでいるみたいだった。
「そんなことってあるんですか?」
朝食の後で、サブローに散歩に誘われた。
HyLAの生存膜を纏って、月面を歩く。
灰色の大地にふわり、ふわりと身体が浮いて、少し心も軽くなる。
「幸子君のうさぎと、マックス君が同一の存在だということかい?」
「……はい」
サブローは、少しやつれている気がした。
けれどいつもの元気で、朝ご飯はしっかり食べている。
そういう風に、アタシは強くいれるだろうか。
リーダーの存在に安心するけれど、少し心配になる。
「なんらかの関係は、正直あるかもしれないね。どちらにせよマックス君は仲間だよ。理由を探そう」
「……!!」
アタシもそう思ってた、という声が、言葉にならなかった。
ぽん、と置かれた手に、涙が溢れそうになる。
「すまない、いろんなことばかりだ」
それは、誰のせいでもないけれど……




