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「マックス君さァ、ほんと何なんだろうねっ」
シュウジはブリーフィングルームのエグゼクティブチェアをごろごろと転がし、部屋を周回している。
シュウジがこんな風に言うのは珍しいけど、そう思っていた気持ちが少し癒されたりもする。そんな自分が好きではないけれど。
本当に、マックスはどこに行ってしまったんだろう。
幸子を傷つけて。
アタシだって、仲間だと思ってた。初めは遠い存在に思っていたけど、話しやすくて、どんどん言葉がうまくなって、親しみを感じている……いたのに——。
全部、こんな日のための偽りの姿だったのだろうか……。
「ほんと、何なんだろ……」
幸子が呟く。
それは、疑問のようでもあり、自戒のようにも聴こえる。
アタシはブランケットをかけなおしてやることしか出来ない。
それでも幸子の表情は、呟く前に比べたら、少し穏やかな気がするのは気のせいだろうか……。
原因は、まだ解明されていない。
サブローの話では、盗まれた——。
という概念が一番しっくりくるのではないかという仮説だ。
黒幕はマックスなのか、それとも、他になにか陰謀があるのか……。
アタシはマックスは巻き込まれているだけだと思う。
不思議とそう思う。
でも、不安な気持ちを消すことができなかった。




