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ハイドロレイダーと、ヘブンズレイダーで、コランダムとヴェルベティンを退けることが出来た。
——そう、彼らは退いた。
「幸子さん、お茶飲も?」
アタシは幸子にブランケットをかけてやったけど、幸子はシュウジとしか話さなくなってしまった。
ひんやりとした月基地のブリーフィングルームには、シュウジと幸子とジュン、そしてアタシ。
サブローはアタシたちの無事を確認して直ぐに忙しそうにいろんな人に話しかけたり、ここに居るように言っていなくなってしまった。
雪子さんも由子さんも……それぞれの仕事に向かってしまったし、大人たちは懸命に働いている。
「え……ちょ、ジュンなにやってるの?」
六角形のブリーフィングデスクにノートとテキストを広げて、ジュンは何かを書き始めた。
「課題だ。Hylabの」
「アタシも……やろうかな」
リュックからノートを取り出す。
ペンを落としてしまって、幸子の座るイスの足元に転がった。
「僕はちょっとやる気になれないな……」
シュウジが銀色のペンを拾う。
シュウジの弱音は珍しいけれど、幸子を思っての台詞かもしれない。弟はそういうやつだ。
「休みたい時は休め——と雨沢が良く言ってる」
ジュンはノートから目を離さずにそう言った。




