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「幸子!!!」
目覚めたら、鑑原総合病院の個室だった。
小さかったけど、オープンする時にお父さんも、お母さんも嬉しそうだったから……私も雪姉と由姉と探検したから覚えてる。
クリーム色の、大きな窓の、中央公園と、夜には新宿の夜景が見えるあったかい病院。
夜の喧騒と、女の子の秘密基地みたいなクリーム色のクッションや、綺麗に整えられたシーツ、それから、秘密の絵本をしまっておける戸棚……。
ここは、お父さんとお母さんの病院だ。
……体が上手く動かない——。
なんとかベッドの横を見ると、雪姉が泣いていた。
身体は、なんともないように見えた。
「……——由……姉は……」
声が掠れていた。
なんで……
「……マックス……」
涙が溢れてくる。
「由子は……大丈夫。今眠ってる。……痛た!」
雪姉の手を握る。
「ご……ごめ……ごめん……ね……」
「何が?みんな大丈夫だったんだから。お母さんたちももう少しで来るって」
雪姉は少しお母さんみたいに見えて、ベッドサイドの椅子に座った。
「サクラさんは……」
「……命に別状はないわ。今日は眠りなさいよ」
額に当てられた手に、眠気が降りて来る……。
窓の外のクラクションが昔みたいに響いてる。
窓の外には、灰色の夜空と、少しの星が見えた。




