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空が、灰色がかっている。
昨日はミカやみんなと楽しかったのに、私はまた一人で観覧車を見上げている。
朽ちたオレンジ色の観覧車は、冷たい風の中で停まっているようにも、動いているようにも見えた。
「動いていますね」
……一人じゃなかった。
初めて会った時よりも背が高くなったマックスが、黒い瞳で空を見上げている。
「髪、切ったら?」
背中まで伸びたつやつやの真っ黒な髪が、ミカを思い出させる。
「ライブまでには切りますよ」
黒い、どこを見ているのか分からない瞳が、ちょっと怖かった。
「ステージ、少しずつ出来てますね」
観覧車を囲むように、マックスと私のミュージックステージが円形に作られていく。
観覧車の上でも、歌うのだ。
あんなに寂しくて、怖くて、高いところで。
「どうして、ここにしたんだっけ……」
荒野の中に佇む、錆びた観覧車。
決めたのは私だった。
……それは本当に偶然。
偶然見かけたポストカードに描かれていた観覧車……。
気になって、気になってしかたなかった。
忙しい合間にもそれを見つめて、ミカやみんなを誘おうと思っていたのに……。
「行こう、マックス」
私は空を見つめる。冬の灰色の……青い空を。
「イエス、ユアハイネス」
私はこの黒い悪魔の手を取ったのだ……。




