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おもちで一杯になったお腹で、ごろん!と畳に横になる。
「あぁ……生きててよかった」
登ってくる楓を撫でてやる。
西側の窓から、柔らかい日差しが降りてくる。
楓の灰色の毛並みが、きらきらと銀色に光っていて、ゆっくり、ゆっくり撫でてやると嬉しそうに鳴いた。
「姉、コーヒー飲むでしょ?」
「飲む」
弟の言うコーヒーは、カフェラテのことだ。
「ちょっと苦めにして」
「OK」
黒の、虹色の猫が楽しい未来を暗示するように描かれたタンブラーに、ドリップコーヒーと、並々とあったまったミルクが満たされていく。
「じゃあはちみつは要らないね?」
「うん」
おしるこで満たされたお腹は、なぜか爽やかな心地で、アタシは苦みを欲していた。……はちみつは大好きだけど。
「ハイ、出来たよ」
「サンキュ」
アタシはむくりと起き上がって、カフェラテの香りに酔いしれる。
……弟の淹れるカフェラテは、絶対に、いつも、アタシに似合う味になる。なぜかはわからないけれど。
「おいしいでしょ」
「うむ」
うまく褒められないアタシは、そんな弟に救われてるのだ。
「ねぇ、実華、月基地で何やってたの?」
「……まぁ、いろいろだよ」
新年のカフェラテは、いつも通りおいしくて、苦くて、あったかかった。




