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「夢だったのかもな……」
「どーしたの?幸子」
年末、アタシは粛々とHyLabの課題をやっていた。
幸子は最近バレンタインライブの準備とかで居なくて、久々に月基地のハンモックに帰ってきたけど、アタシはその間も粛々とやることをこなしていた。
「私がレイダーに乗ってたっていうコト」
「え?」
ノートの上の手を止めて、アタシは幸子を見上げる。
「どういうコト?」
幸子は毛布の隙間に隠れてしまった。
「ココアでも飲む?」
なんか、そうしたほうがいい気がした。
ショーコが、良くしてくれたみたいに、アタシは幸子に丁寧にココアを淹れてやる。
ミルクパンの構造が良く分かってなくて(icomは構造を理解しているものしか出せないしくみ)フライパンでミルクをあたためる。
その間に、マグカップの中でピュアココアとひとさじのミルクと、はちみつでココアを練る。
アタシはその時に、自分のいいところを考える。元気になれ。そんな風にも思いながら。
幸子と出会ってアタシは、性格が違っても、ぶつかっても、好きになれることがあるって知った。
元気になれ。幸子。
「いーにおいしてきたじゃん」
毛布の中で幸子が言う。
「淹れたよ、ココア」
「……飲む」
年が明けるまで、あと少しだ。




