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美しい荒野に、観覧車が回っている。
ゆっくりとしたその風景は、どこか歪で、ゆっくりで、美しかった。
「こんなところで、ライブできるのかな」
私は空を見上げる。
寒々しいブルーグレーの空に、綿みたいな雲が、ふわふわと浮かんでいる。
辺り一帯の荒野は、昔ここで、争いがあったことの名残だ。
観覧車はもともとなくて、どこかの芸術家が、ここに運んで置いたらしい。
どんな動力なのか分からないけど、ゆっくり、ゆっくりと廻る輪は、なぜか懐かしく感じる。
サビがかったオレンジが返って、心をあったかくさせた。
「サチコ」
「なあに、マックス」
この間、世界120ヶ所消失を超えて、マックスはけろりと、ライブ会場の下見についてきた。
「20万人かぁ……」
10万人規模のライブは何度も成功させてきた。
けど、こんな惑星の外れの赤土の荒野で……
でもまぁ、こんなピンチはもう慣れたこと。心配するとっかかりもない。でも、強いていうなら……
「何でこんなに、寒々しいのかな……サチコ」
「あるからだと思う。観覧車がそこに」
荒野の中にひとりでぽつんと立つ様子は美しく、だけど悲しかった。
「そうですか?」
「なんかマックス、日本語上手くなったね☆」
「そうですか?」
「あはっ☆そうですかしか言わないジャン」
けど、それでいい気もした




