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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
波の花……——リメンバーフレンズ
441/744

420.5 手記14

「できたケド……」


 透き通ったあおい、亜空間倉庫でダルそうに煙草を吸う拓海たくみの言葉を俺は待った。


 エリアB総出のブレイズレイダー落成式にも来ず、その後の宴会にも来ず、関連部の片付けにも来ず、翌日、無理やりに引っ張って来て、俺と拓海たくみの研究成果の結晶を見せているわけだけど……


「…………フゥ」


「いや、なんか言ってよ!w」


 拓海たくみは煙草を放り投げて、倉庫のあおい床に寝転んだ。


 エリアBの亜空間倉庫も、メカニックルームも、消煙と消臭機能が追備されていたのは拓海たくみのためだったのに、とうとう拓海たくみは、レイダー施工の現場に一度も来なかった。


 真紅の人型……というか、どこか猫を思わせる三角の瞳の二足歩行型巨大ロボット。


 搭乗者パイロットって、その色を変える。


 搭乗予定者は俺——。


 その色は、何色になるのだろうか……


「グレーだ」


「えっ」


 俺はドキッとして、拓海たくみを見下ろした。


 拓海たくみに俺の瞳の色を見せたことがない。……起きてる間は。


「な、何が?」


 興味があるはずが無い。知られるはずが無い。


 俺はサングラスがしっかりと耳に掛かっていることを確認して、拓海たくみの隣に座った。


「……こいつが動くかどうかだ」


「あ、あぁ、テスト試乗が上手くいくかってこと?」


 無人では、水素ハイドロエネルギーを充足させて、コアピットのセットアップは完璧だった。


 データ上の試験テストも完璧だ。


 ……でも、机上で上手くいったことが、実際には上手くいかないこともある。


「グレー、か……」


 ——私、灰色が大好きよ!


 仁花にかの言葉が甦る。


「でもやってみないと。どっちに転ぶかはわからないし」


 俺は、人と違う灰色の目が好きじゃなかったけど、それを好きだという仁花にかが好きだった。


 新しいエネルギー循環システムも、強化シリコンの安全性も、問題が起こらないとは言えないからこそ、もしもの場合には拓海たくみ小松こまつさん、リエナさんの存続が必要になると思った。


 ……失敗することなんて、考えたく無い。


 けど、これが一番いい選択だと信じて、俺が乗ることを強く望んだ。


 初号機搭乗者(パイロット)なんてカッコいいしね!


「遺書とか、書かないよ、俺は。怖くも無いし」


 それは本当だった。


 仁花にかが計画して、拓海たくみと俺と、エリアBのみんなで造った希望に。


 拓海たくみもグレーが好きなんじゃない?なんて、聞かなくてもそう思った。


「試乗には行く」


 拓海たくみはそう言って起き上がった。


「うん。ありがとう」


 どこまで進んでも、俺はグレーのままかもしれない。


 けど、どちらにも進むことの出来る未来を、愛したい。


 そう思ってもいい気がした。


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