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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
波の花……——リメンバーフレンズ
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「本当に大丈夫なのか……?」


「大丈夫だって」


 忘れられたエリアZに未練がましく訪れてしまう俺が、忘れられた存在のように、おまえの瞳に映らない。


 お前は、頼りない足場コートの上で、ひたすら忘れられた(ロスト)珊瑚コーラルに向き合っていた。


「もう来るなよ、ライ」


 こちらも見ずに、おまえはそう言った。


 ジンは、俺の部屋にも、二課の研究室ラボにも、訪れなかった。


 ただ、忘れられた冬の海の上で、波の花をまとい、黙々と手を動かしていた。


「——俺と……奴だけでもう大丈夫なんだ。帰れよ、ライ」


「奴なんて……」


 ——盗聴されてるんだろ?


 俺とおまえのチャネルは繋がったままだったが、おまえの心までは分からなかった。


 ——されてるけど、奴が誰かまでは俺は言ってないよ、ライ。


 どうとでもなる。


 お前はいつも、そう言った。


「そうかもしれないな」


 せめて、お前を少しでも楽にしてやりたかった。


「飲んでくれ」


 冷やしたミードを手渡す。


「要らない。もういいんだ」


 お前は受け取らなかった。


 もう俺は一生、お前に寄り添うことは出来ない。


 それがお前の答えだと思った。


 止めろとも、待っているとも言えない罪を負って、俺はミードを暗い海に投げる。



「——……ライ。」


 振り返ってお前を見る。


「なんでもない。……もう来なくていい」

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