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「なぜ……あなたがここに……」
美しい月下の海に不似合いな、歪んだ微笑みの現世に彷徨う屍のような男……
「俺が呼んだんだよ、ライ」
海の上のコートから立ち上がって、神は悠々と微笑んだ。天使のように。
「後藤崎山主任、お待ちしておりました」
昼間やられたばかりでこんな風に微笑える神の姿に言葉を失う。
「今まで……申し訳ありませんでした」
そんな神は見たくない。
「これからは、僕の研究は全て貴方のために」
乾いたはずの血の匂い……
「後藤崎山主任」
——ライ
「……!」
「僕が全て間違ってました」
——これは試験だ
ブレインチャネルの接続……俺と神の脳に埋め込まれたチップは、特製のicomを通じて繋がっている。
「僕なんて、貴方のこれまでの歴史や実績に比べたら、 ひとつも勝てるところが無い」
——俺とライは……うまい具合に繋がっているみたいだね
ノイズが混ざる。……けれどそれは深夜の砂嵐のように心地よかった。
「実感したんです。後藤崎山主任の熱心な指導のおかげで」
——俺は負けないよ
「貴方は誰より機関に貢献している」
——たとえ心が、ばらばらになりそうでも
「僕は……」
——月の見える夜がある限りね
忘れられた珊瑚が、さらさらと欠けていく……
「これの改造をします」




