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「世界は青に包まれている……」
「どしたの?ジュン」
月から戻ったアタシたちは、エリアBからエリアZへリバティドルフィンで突き進んでいた。
360°青の世界に、そんな風に言いたくなる気持ちもわかる。
「言いたいだけだ」
「やっぱりね」
アタシは満足した気持ちになって、再びモニターを見つめた。
たしかに、こんな青に包まれたまま、駆け抜ける海は無限の希望を予期してしまう。
昼間の太陽が輝く、水平線の向こうに。
「あと、20分くらいだね」
シュウジが言った。
「シュウジ、あんた大丈夫??」
シュウジはここ数日、月→家→小学校→家→月のルートを大忙しで廻っていた。
部活も行ける時は行ってるし、弟ながら、さすがに疲れた顔をしていた。
「眠いよ……」
シュウジは嘘はつかない。
だから少し、安心している。
「寝てていいぞ。ほっしーは起きていてほしい」
「なんかその言い方……サブローに似てる。起きてるけど」
「光栄だよ、純之助君。まぁ本当に休み休み進んでほしい。宗一郎君は大丈夫か?」
「俺も構いません。シュウジ、寝てていいぞ」
宗ちゃんはフィンヨン、リイヤはファントムに乗っている。
「疲れたらリイヤに引っ張ってもらうからさ」
「おいっ」
何でもできる兄が久しぶりに憎らしい。




