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「行ってきます」
「「「行ってらっしゃい」」」
地下基地の青空の下、宗ちゃんはバックパックを背負っていた。
旅に出る。
昨日、宗ちゃんはアタシたちにそう言った。
HyLAはホワイト機関らしくて、有休がちゃんとでるらしい。
それに、本当なら高校生の宗ちゃんだ。
そんなに早く大人にならなくていいのだ。
もともと旅が好きな宗ちゃんは、スコットランドのアイラ島の、カモミールの里を目指すそうだ。
下の階のお母さんだけじゃなくて、宗ちゃんも花が好きだ。
存分にリフレッシュしてくればいい。
頑張ったのだから。
アタシは旅立つ宗ちゃんにおにぎりを渡した。
「シャケと上のお姉ちゃんの卵、入ってるんでしょうね?」
「当たり前でしょ」
宗ちゃんのおにぎりの具の好みを知らない人間は、ウチの家族にはいない。
そうして宗ちゃんは旅立って行った。
「ライズブレスは持って行ってくれたよ……」
眩しそうに見送りながら、サブローが言った。
「……今朝は来るの、遅いじゃないですか」
アタシはサブローに言った。
「水入らずがいいかと思ってね」
カンカンカン………とサブローがアパートの階段を上がって行く。
先に行かないで貰えますかね!?
「っていうか、ライズブレスって何ですか?」
アタシはちゃぶ台にサブローの分のおにぎりを置いた。




