361
「泣いたらすっきりしたよー……☆」
「……豆腐のお味噌汁、あるよウチ」
これも幸子の好物だ。
「食べるー!!えっ、いやダメだ!こんな顔シュウジ君に見せられないじゃん!!!」
幸子は立ち上がって鏡を見つめて青くなっていた。
「別に気にしないよ……」
「ダメなのー!いいよー、ココア淹れるから」
こぽこぽとお湯が沸く。
「……また作るよ」
「ミカが作ったんだ」
「うん」
真っ白なマグカップに、あったかいココアが2つ。
アタシたちは並んで白いソファーに座った。
湯気がまだ熱い。
甘苦いその香りは、少し心に優しい。
幸子がリモコンを操作して降りてきた、薄暗い部屋のホログラムミニシアターに、昔よく観た、小学5年生の男の子が主人公のアニメが映し出されていた。
「私、これ好きなんだよ、ミカ」
「わかる」
「眠れない夜に観るんだ」
そんな夜、友だちに訪れなければいいのに。
心がちくりとして、だけど少しだけ、自分と同じ部分に安心もする。
「ね、幸子。おいしーね、ココア」
「んね☆……秋だねェ」
「何それ、でもそうかも」
「冬のココアもいーけどさ」
「そうかも」
わからないこと。それでもシンクロする温度。
悲しみと安らぎはいつのまにか混ざって消えていくのかもしれない。
カップの中で、慣れていく苦味みたいに。
「ねぇミカ」
こんな夜があってもいいのかもしれない。
「おいしーね」
「うん」




