表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
冷たい海……——常しえの水中花
374/746

360

 暗い海の底で見つけた真珠みたいな涙が、幸子さちこの瞳からこぼれ落ちた。


 幸子さちこはそのまま、6畳の方のダンスフロアに立ち、ゆっくりと体を動かし始めた。


 水色のライトが、幸子さちこを照らす。


 見たことのないダンス。


 幸子さちこは常に、未来を生きている。



 ……アタシと違って。



「新曲、出たばっかりなのに、また新しいダンスの振り付け?」



「……そ☆」


 幸子さちこの瞳は、鏡の中の自分を見ている。


 笑顔なのに……あふれるパール。


「ごめん」


 罪悪感。


「なんでミカが謝るの?」


「……わからないから」


 友だちなのに。


「私も……分からないから」


 何が?……幸子さちこが何に悲しんでいるのかわからなくて悲しい。


「嬉しかったよ、本。全部。でも」


 幸子さちこは鏡に手のひらを合わせた。


 虚像と実像……二人の幸子さちこがアタシを見つめる。


「私は……ずっとこうだよ。……多分」


 幸子さちこの言ってる意味が全部わかったわけじゃなかった。


「……いいよ。それでも」


 アタシはそう言いたかった。


「……ごめんね、ミカ」


 幸子さちこに寄り添いたかった。


「真珠みたい。ミカの涙」


 言われて、涙に気づく。


 ダンスフロアは、緩やかに、青いライトが海みたいに揺れてる。


 冷たくて、悲しくて……だけどアタシたちは今、一人じゃない。


 崩れ落ちた幸子さちこの姿は、暗い海の底の花みたいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ