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光の渦が、迷いを消し去った後の海は、冷たくて、温かかった。
暗い海……
時々、魚の鱗が光る。
「や、やったぜ!リバティ!!!」
ファントムレイダーが傍らに降りて来た。
「スッゲー!!流石!!やったぜ!!!」
不思議な高揚感に、息を切らす。
「姉……あれ……」
シュウジが指し示した水の底に、純白の真珠。
「ほっしー、シュウジ、ハイドロレイダーに変形して確保だ」
「うん」
冷たい水の底……
サーチライトを反射して、丸い真珠が佇んでいた。
浮遊感を噛み締めながら、ゆっくりと歩んでいく。
それは、美しくて儚いけど強い光。
アタシが重ねた道の途中にあるもの。
躊躇いながら、ゆっくりと手を伸ばす。
「……直径、1メートルほどか……」
計測モニターを見て、ジュンが呟いた。
「綺麗だね」
ハイドロレイダーの手に収まったそれをみて、シュウジが嬉しそうに笑った。
手に入れた宝石の価値は、アタシにはわからないし、いつか失ってしまうものかもしれない。
それでも。
「帰ろっか!ミッション成功だね!!!」
「おぅシュウジ!ヨシっ掴まれよ」
ファントムの尻尾を掴み、帰路につく。
しっかりと傍らに、宝石を抱いて。
だんだんと明るくなる灰色みたいな海は、少し光って温かいのだ。
そう思った。




