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「忙し過ぎて、って感じですかね」
違う。
幸子はみんなに元気を出してもらうという夢に妥協はしないし、ライブで忙しいことを辛く思ったりしない。
言いながらアタシはやっぱり別の何かがあると感じていた。
「アタシのこと……嫌いになったのかな……」
「それはないと思うわよ。それは分かるわ。あの子の姉としてね。……でも、前も言ったけど私にはあの子がわからないの。……ダメよね」
「さ、幸子は!……あの、雪子さんと由子さんにも笑顔でいてもらいたいから言わないんじゃないかと思います。だから……」
だから……。
話せば話すほど、一つの結論に辿り着いてしまう。
なぜ?いつから?
幸子は何かを抱えている。
「誰になら言うんだろう……」
アタシたちはサブローを見た。
「ふむ……正直心までは、システムじゃ解析できないからね……」
アタシも、自分の思い全てを話せるわけじゃない。
それでも、アタシには言えないのだろうかと考えてしまう。
「まぁ幸子君は明日コランダムで出撃予定だし、今日の時点では身体面に問題はないからね……様子を見てもいいんじゃないかな」
そうかもしれない。
でも、大切な人の抱える違和感を、アタシはどうすることも出来ないのだろうか。
「ミカちゃんは、やっぱり優しいわよね」
雪子さんが呟いたけどそんなことない。
だって結局アタシには、誰も救えないのだから。




