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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
9月の月……——刻遺のクリザンテーム
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「はぁ……」


あね、どうしたの?」


「別に……」


 一晩寝かせたカレーに、24時間オートマティックデリバリーのチキン南蛮が乗っている。


 それに、母は新しく、ごまワカメサラダもえてくれた。


「お腹空いてないの?」


「空いてる」


 アタシはチキン南蛮にカレーをからませて口に運んだ。


 一晩寝かせたカレーはおいしいし、古代のテレビドラマの再放送は面白い。


「懐かしいなー……この探偵さんと刑事さんのでこぼこコンビが、痛快に犯人を暴いていく様が好きだったんだよね」


 母が若い頃から、何度か繰り返されている再放送は、アタシもシュウジも好きなドラマだ。


 黒い服を着た探偵がスポットライトを浴びて、痛快に謎を暴く。


 アタシもこんな風に、なんでも見抜ければいいのに……


「えー……あねは何か悩んでいますね?そうでしょう?」


 手のひらを顔に当てて、シュウジが探偵の口調を真似た。


「別に。アンタも早く食べれば?」


 シュウジとそうちゃんが、アタシのもやもやを気にしているのが分かってるけど、アタシは上手く言えない。


「食べたら寝るよ」


 来るって言っても、幸子さちこも、他のみんなも、来れなくなることもあった。


 歯磨きしながら、お風呂場の小さな窓から空を見上げる。タイルに滑る水が、ひんやりと冷たい。


 木枠に切り取られた小さな夜空と白い月。


 なんだか全てが、はかなく見えた。

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