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「皆んな、足元滑るからね〜」
寒いくらいに涼しい青を見下ろしながら、暗い洞窟を進んだ。
「綺麗ですね!」
シュウジの声が、ぼわんと反響している。
「ジュン君、民宿のカフェ、アイスココアあったわよ」
「ハ……そ、そう……デスカ」
ジュンはほとんど、ハイ……しか言ってないけど、由子さんに手を貸しながら歩いていた。
「どしたのミカ、にこにこしちゃって☆」
「いや別に!……綺麗だね、ここ」
魚のおいしい民宿に一泊して、サブローにこの洞窟に連れてこられた。
「だね☆……ん!」
「ありがと」
幸子の手を借りて岩を下っていく。
息抜きの続きかな、とサブローは言った。
「本当に綺麗な場所」
リディアは思いのほか器用に岩場を歩いていく。
透明度の高い地底湖を覗き込んで、惑星の素晴らしさに心が動かされる。
「水深100メートル、だってさ」
「嘘!……ていうか宗ちゃんそのゴーグルしてて見えるの?」
手が届きそうな透明な水の底。
その不思議さに怖さも……ドキドキもしていた。
「まぁ、外すのもいいか」
宗ちゃんの黒い瞳に湖の青が映る。
こんな闇と青の中では、それがいいような気がした。
「あー来て良かったなー☆」
どれくらい歩いたか、アタシたちの心は澄んでいた。
洞窟を出ると、夕方の夏の匂い。
まだ残る蝉の声と閉じかけたアサガオが茜色の陽の光を浴びていた。
……夏はきっと、あと少しだ。




