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「ジュン君、何でいかないの!?」
「なんでもだ!」
地下基地アパート前広場で、シュウジのモバイルホログラムからジュンの叫び声が響いていた。
「夏休み最後の旅だよ!?僕たちのアオハルだよ!?もー姉ぇ……」
モバイルを渡されたって……シュウジに説得できない人を、アタシがなんとかできるとは思えない。
空き地に停まった古代の白いハイエースのバックドアはフルオープンになっていて、アロハシャツのサブローがせっせとクーラーボックスやら棒……?やらを積み込んでいた。
「う……えと、ジュン、元気?」
ジュンとは三日前にトレーニングで会ったばかりだ。
「元気だが?」
思いのほかジュンの声は落ち着いていた。
「え、えと、……なんで行かないの?」
サブローから誘われた夏旅。アタシたちは夏休み、調査だとかトレーニングだとか、正直頑張ったからジュンも参加してはどうかと思う。
「ほっしーには分かるだろう。我は自分の部屋でゴロゴロするのが好きだ」
……分かるとも。
「で、でもさ、それは他の日でもできるじゃん」
羨ましい。いまや合宿場となっているアタシの家でごろごろなんてずっとしてない……だから分かる……でもさ。
「2ー3だと……ほら、リイヤも宗ちゃんも行くしさ!他にも結構みんな行くし、あっ、由子さんも来るし」
ジュンの息が止まった気配がした。




