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「えっ、なんか……別にアタシたちがいなくても」
水圧で進みたくても前に進めない。
湾岸に、激しい戦火が見える。白金の光が、迫り来る黒い軍勢を圧倒していた。
やらなきゃいけないことが、見えてる筈なのに……
進みたくても足を取られて進めない……そういう夢を見たことがある。
そして、自分がやらなきゃと思っている間に、他の誰かが自分よりうまくやってしまうのだ。
「強いな……ノーマン」
「ちょ、ジュン君!ちゃんと歩こうよ!!でもほんとに凄い……フィンヨンの水素針、何であんなに綺麗なんだろう」
リディアの神竜は、人の姿になっても、その神々しさで夥しい数の鴉を圧倒していた。
「リイヤは……まだまだだな」
「聞こえてるよ!ジュン!!早く来い!!!」
リイヤの海蛇は騎士のような姿に変形し、剣のような水素針を振り回して鴉を追い払っていた。
「武器!格好いいよ!リイヤ君!!!」
「ありがとよ!シュウジ!!!」
宗ちゃんのブレイズレイダーの炎は金色を帯びて、迫り来る靄にも似た鴉たちを消滅させ続けていた。
誰も傷ついてはいない。
でも駄目だ、数が多すぎる——宗ちゃんでも消しきれない闇を、アタシたちが何とか出来るのだろうか……
「皆んな!鴉の発生源を解析中だ!……良くない結果が出そうだ……鴉を海に近づけないでほしい!」
「分かってます!」
宗ちゃんが跳躍する。
その姿を追って、靄のような鴉たちが海岸沿いを飛び抜けた——……!!




