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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
37.8°C……——雷鳴と風鈴
330/745

319

「何にもいないね」


 フィンヨンレイダーの神々しい白い光が、灰色の海を仄かに輝かせている。


「すぐ着いちゃいましたね。わ!何あれ!!」


 弾んだ声のシュウジの目線を追う。


「ぎょっ!何アレ……!!」


 コックピットに貼り付いて、モニターを凝視する。


「カニ……だろうな」


 東京海底谷(トウキョーキャニオン)に静かに積もった細かい砂利の上を、トゲトゲした怪物が歩いている。


「イガグリカニだってさ。スゲー!」


 通信機からリイヤの感嘆した声が入ってくるけど……


「こ、怖いよ!」


 アタシは昔からカニが怖い。


 特にこんな、トゲトゲしたやつは!!


 も、もっとこうさ、丸く生きればいいのに……(泣)


「大丈夫だよ、ほっしーちゃん。中身は柔らかいし、優しいんだよ。暗い海の底っていう環境がそうさせているだけ」


「まぁそっか……」


 きっとこの恐怖はなかなか消えないし、アタシの心とは相容れないかもしれない。


 けど、海の底でゆったりと生きていることは、格好いいかもしれない。


「群れだ……」


 小さなカニが、より小さなカニを導くように進んでいく姿は、美しいようにも思えた。


 少し気持ちを落ち着けて、アタシは海の底の生き物から目を逸らした。


「この海谷に沿って、もう少し南だよね」


「うん」


 ディストレスに関係する磁場の発生源。


 アタシたちは慎重に海の底を進んだ。


 不確かな灰色の水の底を。


「……何ココ!!」

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