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「リバティ!!やっほーい!!!」
「ちょっ!シュウジ!!ついてけない!!!」
物凄い重力にひっぱられて、アタシは操縦管を必死で握るのがやっとだった。
「ジュン!大丈夫!?」
「辛うじて!」
瞳に熱いエネルギーが集まって、バーチャルディストレスが石になっていく。
シュウジは水を得た魚のように、Sea liberty dolphinを駆っていた。
トレーニングルームは擬似液で満たされ、白いイルカが光の速さでもはや、ジェット機みたいに飛んでいた。
ジェットコースターより、速い!!!
凄まじい重量に、アタシはトレーニングを投げ出したくなっていた。
「ジュン君!凄いよ!!!」
バーチャルディストレスが、ジュンの狙いどおりに次々と石化していく。
アタシは……。
必死にやり過ごすしか無かった。
初めての擬似液トレーニングが終わって、弟は心から楽しそうだし、ジュンも疲れてはいながらも、何かしら掴んだようだった。
アタシは……。
「ミカ君、良く耐えてくれた。シュウジ君はいい感じだ!ジュン君、良く当てた」
全然、自分の良さを出せなかった。
「耐えるだけの人って、要るんですか……」
「姉……」
嫌な空気。
アタシはまた、アタシなんて要るのか問題の沼に嵌りそうだ。




